tofubeats『First Album』から始まる新たな音楽シーン


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tofubeatsが10/2(トーフの日)にメジャーフルアルバム

『First Album』をリリースする。

1999年、まさにCD全盛期の時代。宇多田ヒカルの『First Love』は実に765万枚を売り上げ、日本史上後にも先にも1番売れたアルバムとしてJ-POP界の金字塔として君臨する。そして、それは15年経った今、ミュージシャンのルーツミュージックとして語られる事も多く、tofubeatsもその1人であり、『First Album』のフォント他に作品への愛が詰まっている。

『First Album』は『First Love』が帯びたポップスをこの2014年に呼び戻す作品だ。

どんな音楽も突き詰めればポップスに成り得る。その『First Album』がなぜここまでポップスに成り得たのか。それはtofubeatsの10年間を紐解けば分かるだろう。

tofubeatsを説明する上で、必要不可欠な存在がMaltine Recordsだ。中学時代、バンドは組ま(め)なかったtofubeatsがサンプラーを手にし、神戸のニュータウンから発信を向けていた先は掲示板とブログだった。今でいうTwitterもFacebookもない、今より閉塞感のある世界。そこに自分の楽曲を配りMaltine Recordsの面々と出会う。

2008年、自主制作CDの『HIGH-SCHOOL OF REMIX』を発売し、それが反響を受け各所からリミックスのオファーが来る様になる。ももいろクローバーZの”ももいろパンチ”を始め、数多くの曲を担当した。某メジャーレーベルの杉生氏の目に止まり、その縁で『WIRE08』に出演。WIRE向けに四つ打ち曲を作成した名義が「dj newtown」だ。神戸のニュータウンで育ち、TSUTAYA、ブックオフのCDを飲み込む。神戸の街並みがVJに音楽を味方につけていたに違いない。

dj newtown – Flying between stars(*she is a girl)
http://maltinerecords.cs8.biz/24.html

tofubeatsもオールナイトイベントに通える年齢18になる。Maltine Recordsのokadada、DJ WILDPARTY、tomadがそこには多くいた。2010年にネットレーベルとして無料で配信をしていたMaltine Records が『MP3 KILLED THE CD STAR?』というCDを発売する。何とも風刺の効いたタイトルだが、このCDの10曲目に” 朝が来るまで終わる事の無いダンスを”が収録される。この曲は後にリリースされる” Don’t Stop The Music”にも通じる部分があり、何もライブが全てではなく、誰しもが通る家で音楽を聴いて心踊るあの感覚。ダンスは1つではない。

それと並行して作成されていたのが”水星”だ。一緒に作成していたのがオノマトペ大臣。

サンプリング元となったのがKOJI1200”ブロウ・ヤ・マインド”。藤井隆を起用した”ディスコの神様”に通じるものをここからも読み解く事が出来る。

この”水星”はネットで瞬く間に拡散していき、soundcloudにアップされた1年後の2011年にリリースされ1000枚以上のヒット、iTunes Storeで総合1位を獲得した。

2013年、アルバム『Lost Decade』、『University of Remix』が全国流通盤として発売される。『Lost Decade』は特に売れ、CDショップから一時無くなる程だった。ここから更にtofubeatsは階段を駆け上がる。

同年、11月メジャーレーベルであるワーナーミュージックから『Don’t Stop The Music』を発売。森高千里をボーカル起用した” Don’t Stop The Music”は幅広い層に受け入れられた。MVに登場する『LOST DECADE PARTY』、tofubeats役の子供が着ているMaltine RecordsのTシャツ、フロアで踊るオカダダTシャツとtofubeatsは微塵も変わっていない。

同じ頃、CMでtofubeats×小出祐介(Base Ball Bear)としてパルコのCMに起用される。プロデューサーとしてお茶の間にtofubeatsが多く流れた瞬間である。そして、フェスやイベントにも数多く出演する様になった中、tofubeatsの名を更に広める事となった作品が、まだ記憶にも新しい『ディスコの神様』だ。藤井隆をボーカルに起用した”ディスコの神様”はお笑い芸人を起用するという昨今あまり見なくなったかつての2000年代のJ-POPシーンを彷彿とさせる。代官UNITで行われた“ディスコの神様”リリースパーティーは当日券も売れに売れ、フロアは超満員となった。

その勢いのまま夏フェスシーズンに突入する。2013年冬とは比べようのない程の出演数となり、ROCK IN JAPAN、YANO MUSIC FESTIVAL、京都音楽博覧会、等と振り幅の広いフェスへの出演となる。中でも「森高千里 with tofubeats」として出演したSUMMER SONICのアクトは絶賛され、日本テレビ『LIVE MONSTER』(9/28(日)23:30~)に地上波放送として登場する事となる。

ここまで駆け足でtofubeatsの10年を説明して来たが、改めて10/2(トーフの日)メジャーフルアルバム『First Album』がリリースされる。

既発である” Don’t Stop the Music”の森高千里、”ディスコの神様”の藤井隆を始め、楽曲プロデュースも手掛けるlyrical school、”マジ勉NOW!”で過去にもボーカルとして起用していた新井ひとみ(東京女子流)といったアイドルから、盟友okadada、憧れでもあったPES(RIP SLYME)、BONNIE PINKといった『Lost Decade』以上に目を見張る豪華参加アーティストだ。

しかし、『First Album』の真髄はこの10年間にある。

tofubeatsの音楽にはどこか喪失感、寂しさを纏っている。”朝が来るまで終わる事の無いダンスを”にも、” Don’t Stop the Music”にも、”ディスコの神様”にも、いつかパーティーは終わりまた他人に戻る。それでも音楽は鳴りやまないで、帰路の電車の中で、家のパソコンの前でまた音楽は鳴り始める。

「音楽が聞こえるとき 気持ちはいくつになっても変わらない」(Don’t Stop the Music)。

「暇で死んじゃいそうな僕を助けてよ MUSIC」(ディスコの神様)。

「音楽が消費される時代」と揶揄されCDが入れ物と化すだけのこの時代だけれど、かつて『First Love』がリリースされたあの時代、あの時にしかなかった特有の空気感が確かにあった。

音楽はレコードからCDへ、CDから配信へと姿を変えていく。何を指標とすれば分からなくなったメディアの中で、神戸のニュータウン、tofubeatsはインターネットと音楽を味方につけていたはずだ。

この『First Album』からまた新しい10年、15年が始まる音楽シーンを楽しみにしている。誰しもが「音楽サイコー!」と言える様な、そんなニュータウンがきっと来る。 (文=渡辺 彰浩)