ぼくらの日常は乃木坂46にハッキングされる?! キーワードは「物語」と「余白」


nogizaka46
どうしても乃木坂46が気になって気になってしょうがない。あなたもそうでしょう?
身の回りでもよく乃木坂ちゃんの話を聞くし、みんな日曜深夜は来る月曜日を前にして震えながら「乃木坂って、どこ?」を観てるし。

そんなぼくらを惹きつけてやまない彼女たちの魅力、人気の秘訣はなんなのだろう。少年漫画のヒロインのような生駒里奈、美人でありながらギャップに驚く白石麻衣、斜め上を行くセンスを持つ生田絵梨花、ツッコミが追いつかない松村沙友里、掴み所のない橋本奈々未……と気になるところなんていくらでもある。もうキリが無い。そう、キリがない。

が、しかし、ここでは彼女たちの魅力を支えるものとして、乃木坂46の楽曲が持つ「物語性」と彼女たちの「余白」に注目してみよう。

「長回し一発撮り、しかも逆再生」というギリギリの綱渡りをやってのけるMVにも注目

例えばAKB48の楽曲は、その多くが「僕」を主人公に置いた男性の言葉で歌詞が書かれており、「これはファンの気持ちを代弁してるんだよ」というのはよく聞く話である。それに対して同じように男性と女性の主人公がいる乃木坂46の楽曲だが、注目すべきはその女性主人公のキャラクター設定や物語が非常に細かく、具体的に描かれていることだ。

教室を舞台に、ある出来事から「イケてない彼」へのメッセージが歌われる「シャキイズム」、友達の家に集まったときの物語が細かく描かれる「でこぴん」。個人的には渋谷を舞台に女の子の妄想が広がっていく「偶然を言い訳にして」がクセになる。

大枠として物語を持つものはたくさんあるが、場所やシチュエーションを限定し、ここまで詳細なディティールをもって物語を描くアイドルソングは滅多にない。物語から主人公のキャラクターが見えてくるのもポイントだ。

曲を歌うということは、物語の中にいる主人公を演じることだ。そして曲中の物語が強くなればなるほど、その主人公を歌い手のアイドルたちがまるで女優のように演じることになる。

乃木坂46楽曲の女性主人公はいつだって、生活圏にひとりやふたりはいる、男性の夢を壊さない程度にそこそこリアルな存在だ。そんな「安全な女性像」を詳細なディティールをもって描いた物語を歌うことで乃木坂46のメンバーはどこにでもいる「身近な女の子」を演じ、ぼくらは曲の主人公と歌い手をうっかり同一化してしまう。

「身近な女の子=曲の主人公=歌い手」という三段論法で、ぼくらは曲を歌っているアイドルを自分の身近な存在であるかのように錯覚してしまうのだ。

ぼくらが乃木坂46に夢中になるのは、どんな男性でもそれぞれ持っている百人いたら百通りの理想的な「身近な女の子」を、彼女たちが楽曲を通して擬似的に演じてしまうからに他ならない。

彼女たちはそれぞれが持つオリジナルのキャラクターのままで、楽曲から与えられたキャラクターを演じる、「半分女優で半分アイドル」のような存在である。ぼくらは、その「半分女優」の部分を好き勝手に解釈し、彼女たちの余白に「身近な女の子」として思い思いの「役」をあててしまうように仕向けられている。このアイドル本人たちのキャラクターを潰さないようにしつつも物語を展開させるような、「余白」の作り方がとにかく絶妙なのだ。

その「役」は、学校の先輩・後輩や仕事の同僚でもなんでもいい。あのメンバーがサークルにいたらなあ、と考えた瞬間、渋谷の街やいつもの教室など、僕らの生活空間は乃木坂46にハッキングされ、退屈な日常の中に妙な形で彼女たちが登場することになる。

堀未央奈の笑い声がキレッキレな最新の映像クリエイターコラボシリーズ予告編

本家AKB48のようなドキュメンタリー性を可能な限り避け、プロデュース方法にも楽曲同様「演じる」という要素を持ち込んだのが乃木坂46の大きな特徴だ。

本家名物の投票制度を持ち込んだ舞台公演『16人のプリンシパル』、シングルの特典で制作される映像クリエーターとコラボレーションなど、彼女たちは外部から与えられた「半分リアルで半分フィクション」のキャラクターを演じている。

センター決定のための投票制度を取らないことなどアイドルのドキュメンタリーを必要以上に描かないことは、彼女たちが自分以外のキャラクターを演じるための余白を残すことに一役買っているのだろう。

では最後に、楽曲の主人公は男性であるものの、乃木坂46が「身近な女の子」を演じる、「ロマンスのスタート」のMVをご覧いただこう。

バイト仲間の生駒里奈といい、朝、通学途中にすれ違う白石麻衣といい、妄想を具現化したようなキャスティングがいちいち完璧だ。このMVを観れば、ぼくが書いていることにある程度は納得して頂けるかもしれない。

(文=伊藤 駿)


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