Mr.Childrenのマーケット戦略から見るアルバムへの布石


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Mr.Childrenが11月にニューシングル『足音 ~Be Strong』をリリースする。Mr.ChildrenがシングルをCDとして発売するのは『祈り ~涙の軌道 / End of the day / pieces』以来、2年7カ月ぶりの事である。というのも、「CDが売れない」と言われ数年が経ち、音楽を聴くという事はYouTube、SoundCloud、iTunesなど様々なものに分散し、今の時代CD売上のみでそのアーティストの人気、楽曲の価値を計るのは浅はかとも言える。

Mr.Childrenは1994年から96年に『CROSS ROAD』、『innocent world』、『Tomorrow never knows』、『名もなき詩』等、リリースしたシングルCDが8作品連続でミリオンを達成し、世間的にも「ミスチル現象」と言われ社会現象となった。中でも『名もなき詩』は週間初動120万枚を記録し、オリコン史上初となる初動売上のみで100万枚を突破したシングルである。アルバムとなると『Atomic Heart』、『BOLERO』は共に売上300万枚を超え、まさにCD媒体としての一時代を築いたアーティストと言える。
しかし、時は流れ1999年にリリースした『終わりなき旅』を最後にミリオンは途絶え、2012年にリリースした『祈り ~涙の軌道』では26万枚までに落ち込んでいる。2012年度年間オリコンシングルチャートとしては23位、アイドルを除いたアーティストの中では最高順位だった。けっしてMr.Childrenの人気が落ちた訳ではなく、CDとしての媒体の終わりを意味している。
一方、アルバムの方も一時期300万枚を超えていた売上も2010年『SENSE』、 2012年『[(an imitation) blood orange]』は共に76万枚とミリオンを割れている。デビュー20周年にリリースされたベストアルバム『Mr.Children 2001-2005 <micro>』、『Mr.Children 2005-2010 <macro>』はかろうじて100万枚を突破したものの、オリジナルアルバムでミリオンを突破するのはこの先難しい。

そんな作品達なのだが実はレーベルであるトイズファクトリーは毎度変わったマーケット戦略を試みている。それが効してこの結果なのかどうかは判断に苦しむが、まずは2010年にリリースされた『SENSE』から語っていきたい。

■ノーメディア露出
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J-POPシーンの通常のリリース方法として、シングルを何枚かリリースし、それらを含めたアルバムをリリースというのが通常だが、2010年12月にリリースされた『SENSE』は配信曲としてリリースされた『fanfare』、既存で発表されていた”365日”以外は全て新曲。そして何よりリリース日の2日前までジャケットはおろか、収録曲、アルバムタイトルまで発表しないという徹底ぶりであった。情報解禁前には「トビウオニギタイ」というキーワードの元CM、街頭などあらゆる所に広告を出現させ、人々の興味を誘った。2010年発売のアルバムでは嵐の『僕の見ている風景』に次いで2番目に高い初動売上を記録し、アルバムツアーも2011年にアリーナツアー『Mr.Children TOUR 2011 “SENSE”』、スタジアムツアー『Mr.Children STADIUM TOUR 2011 SENSE -in the field-』と2回に渡って行われた。
アリーナツアーでは2010年の『ap bank fes』で久しぶりの解禁となった”シーラカンス~深海”、” 【es】 〜Theme of es〜”を再び演奏し観客を驚かせた。また、東日本大震災の影響で一部公演が延期・中止となり、セットリストも一部変更となった。この時に作られた楽曲が”かぞえうた”であり、いち早く配信されツアーでも披露された。続くスタジアムツアーでもライブ終盤に披露され、”かぞえうた”、”終わりなき旅”という流れはファンの中でも絶賛されている演奏である。

■なら僕は愛してる人に「会いたい 会いたい」っていうひねりのない歌を歌おう
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デビュー20周年であった2012年に2回目となるベストアルバム『Mr.Children 2001-2005 』、『Mr.Children 2005-2010 』がリリースされる。これはデビュー10周年の際にリリースされた通称『肉・骨』と対を成すジャケットであり、丸い球体は精子と卵子を表している。初回限定盤にはMUSIC VIDEOSのDVDが付属され、通常盤と同価格で発売された。
『SENSE』のリリースの反動なのか、TVメディアに多数出演するようになる。” youthful days”、”くるみ”、” Worlds end”、” HANABI”、”365日”など幅広い年代の楽曲を披露し、2枚共にミリオンを突破。約10年前に行われたツアーを彷彿とさせる『MR.CHILDREN TOUR POPSAURUS 2012』を開催し、ベストアルバムの曲はもちろん、カップリング曲である” デルモ”、” 1999 年、夏、沖縄”、ミスチル現象真っ只中にリリースされた『Atomic Heart』の楽曲” Round About ~孤独の肖像~”などを披露し、ベスト盤でMr.Childrenを知ったというファンも、昔からのファンも満足出来るツアーとなった。

続く2012年11月『[(an imitation) blood orange]』をリリースする。オリジナルアルバムとしては2年振りであり、またしても『SENSE』とは打って変わってタイアップが多く、メディア露出の高いアルバムとなった。トリプルA面となった『祈り ~涙の軌道 / End of the day / pieces』を全て収録し、中でも” 常套句”はドラマの主題歌になり、年末の音楽番組で何度も披露された。「君に会いたい 君に会いたい」というストレートな歌詞故に、カラオケで多く歌われ、”365日”に続く結婚式ソングとしても愛される曲となった。

2012~2013年にかけてドーム、アリーナ会場と続く『Mr.Children[(an imitation) blood orange]Tour』が行われた。” 過去と未来と交信する男”でのイリュージョンから始まるという何とも奇抜な演出が賛否両論を呼んだが、” LOVE はじめました”で桜井和寿は歌詞を一部変えた「なら僕は愛してる人に『会いたい 会いたい』(愛してる)というひねりのない歌を歌おう」と歌う。これはメディアに散々出てきた自分達を皮肉りながらもPOPバンド、POPSAURUSとして背負って立つ事を肯定しているようにも思える。
というのも、『SENSE』リリース時からMr.Childrenとして一切メディアインタビューはしなくなる(個人、ウカスカジーとしてのインタビューはある)。これは「作品はリスナー、受けて側で物語を作って欲しい」という理由かららしい。

■ap bank fesの休止、Summer Sonic出演、FCツアーでの新曲大量披露

2005年から静岡県つま恋で毎年開催されていた『ap bank fes』が2012年を最後に開催休止となる。多くの人が知る様にMr.Childrenも毎年出演していたフェスである。2013年の夏フェスはap bank fesが開催されない代わりに『SUMMER SONIC』出演が決定した。大阪、幕張と2日連続の出演となり、” Tomorrow never knows”、” 終わりなき旅”、” innocent world”と誰もが分かる名曲を連発し、会場を大いに沸かせた。配信曲としてリリースされていた” REM”も初披露された。幕張会場の演奏時、ステージの奥に曇天と共に稲妻が鳴り響くが奇跡的に雨に振られる事もなくライブが続くという場面もあった。

2014年、Mr.Childrenとしては配信曲『放たれる』をリリースする。メディア露出は一切なかった一方、桜井和寿がかねてから交友の深いGAKU-MCとのユニット、ウカスカジ-を本格始動させる。
Mr.Childrenとして夏フェスでの出演は一切なかった2014年、しかし8月急遽『Mr.Children FATHER&MOTHER 21周年祭 ファンクラブツアー』が発表される。異例の全国Zepp会場。普段何万人も入るキャパシティでライブを行っているMr.Childrenが、数千人というキャパシティでライブツアーを行う事はMr.Childrenがまだデビュー間もない頃以来で、チケット争奪戦は熾烈を極めた。ここでそのツアーのセットリストを紹介したい。

1.Everything(it’s you)
2.旅人
3.名もなき詩
4.Melody(新曲)
5.fight club(新曲)
6.斜陽(新曲)
7.蜘蛛の糸(新曲)
8.I can make it(新曲)
9.放たれる
10.タイトル未定(新曲)君がいた夏(大阪公演)1/6の夢旅人(カヴァー・札幌公演)
11.タイトル未定(新曲)
12.Simple(東京公演)僕らの音(福岡公演)Tomorrow never knows(名古屋公演)彩り(大阪公演)花 -memento mori-(札幌公演)
13.進化論(新曲)
14.足音 〜be strong
15.幻聴(新曲)
[アンコール]
16.口笛
17.未完(新曲)
18.独り言

18曲中10曲がタイトルすら決まっていないような新曲であり、配信曲である”放たれる”、11月に発売されるシングルに収録される” 足音 ~Be Strong”、” Melody”も一足早く披露されている。FCツアーだからこそ出来た露出の仕方とセットリストではあるが、なんとも贅沢な「先行試聴会」形式のライブであり、行けなかったファンを見事にライブ枯渇状態にしている。「今度はもっと多くの人が足を運べるように、今構想を練ってます。そのときは是非、僕らの新しい音に触りに来てください」と表明もされているので行けなかった人達はその時を楽しみに待っていよう。

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『足音 ~Be Strong』を11月にリリースし、今冬にもリリースが予想されているアルバムが控えている。ツアーも含め、Mr.Childrenが今後どのような動きを見せるのか、しっかりと追って欲しい。